【山記録】    奥穂高3190m 
日時・天候   2011年08月09日(火)〜10日(水)/2日とも晴
山名 奥穂高(3190m) 日本百名山
山域   北アルプス(長野県)
コース・タイム  8月9日横尾山荘発(5:00)〜凅沢小屋(8:00-8:30)〜穂高岳山荘(12:30-13:30)奥穂高(14:40-15:10)〜穂高岳山荘(16:00)
  
総タイム(横尾山荘-穂高岳山荘)7時間30分
8月10日→穂高岳山荘(06:00)〜奥穂高(07:10-0730)〜穂高岳山荘(08:20)〜凅沢ヒュッテイ(10:30-12:00)徳沢ロッヂ(15:30)
   総タイム(穂高岳山荘-徳沢ロッヂ)8時間
人数 単独
難易度   体力度★★★★ 難易度★★★★(ガイド本による) 

軌跡・山旅改訂40000図】赤線は上り青線は下り

【鳥瞰図】蝶槍上空2360mから撮影

足跡
 <前がき> 
 岩登りの技術を持たない自分には登山の自信がないので穂高と剣岳は避けていた。
 夏が来ると岳人や山渓本等には、穂高の登山ガイドが掲載され「オイデオイデ」のラブコール記事が載せられる。分県登山ガイド「長野県」や山渓のアルペンガイドを見ると、「涸沢
北穂高奥穂高〜前穂高」コースの、体力・技術・危険度は四つ星である。
 それなのに何故か「一般向」とも読める内容に惑わされる。
 
ネットを見ると初めて来たとの書き込みも多くあり、何となく行けるのではないかという気分にさせられた。
 今回は、老人の単独行きである。ゆっくり歩いて行けるところまで行って見ようと決断した。

 <8月9日>
 前日、上高地から徒歩で3時間要し横尾山荘に泊まる。
 横尾山荘は、蝶ケ岳・槍ケ岳・穂高への登山拠点でもある。
 建物は、2008年に改築されたのでまだ新鮮さを維持している。
 水が豊富にあるのでお風呂もあり登山者にとっては有難い宿でもある。
 一泊二食で9500円と値段が高いのが難点である。
 
 午前5時、横尾山荘出発。
 外はまた薄暗い。ヘッドライトを付けなくても何とか視界かきく。
 河童橋に似た吊橋を渡る。この橋は、近年架け替えられた横尾大橋である。
 橋を渡り森の中に入る。
 周りの大きな木は、暗くてよく分からないがダケカンバかカラマツだろうか。
 静かな雰囲気は不気味である。
 昨日の出来事が頭によぎる。

 横尾山荘に向かう途中、小熊と対峙した。
 それは、上高地から少し行った登山道での出来ごとである。
 女性の悲鳴があがったので、前を見ると小熊が出没したのだ。
 夢中で杖を振り回し笛を吹いて威嚇したら川の中に飛び込んで逃げて行った。
 小熊とはいえその機敏な動きとど迫力に驚いた。
 多分、親熊が近くにいてキャンプ場のゴミを漁りに来ているんだろう。
 大勢の人が往来しているので恐くはなかったが、静かなところなら厭だ。
 熊は、足が早くて絶対に逃げられないと思った。単独歩きは恐い恐い。

 前に、ぼんやりと見えた人影は中年女性の二人組。
 その前を歩いていた四人グループを追い越し、上空も明るくなりやっと落ち着いた。
 岩小屋跡に来ると、屏風の頭がゴツイ。この頭を周り込むように登山道が付いているので
凅沢近くまでこの顔が時々現る。
 本谷橋に来て朝食をとる。
 横尾山荘で頂いたパンと飲み物と菓子類のセツトを取り出す。大リュックを背負った大学の山岳部らしき若者も対岸で朝食をしているのが見えた。
 
 本谷橋からは凄い急登である。
 喘ぎながらも花を楽しみながら歩けるのが単独の利点である。 
 ナナカマドの実が少し赤みを帯びている付近に来ると、上から降りてきた人から涸沢まで15分と聞く。
 この付近からは、穂高の山並みやちらちらと大雪渓も望めたので元気が出た。
 少し先で、分岐標識がある。右、涸沢小屋と左、涸沢ヒュッティと書かれている。右の道をとる。
 10分ほどで涸沢小屋に着く。
 
涸沢カールとコンパクトな涸沢ヒュッティが眼前に見える。
 北穂高や前穂高など尖った山が周りを包み物凄い迫力である。ボリュウム感は外国の山(本場アルプス)にでも来ているようだ。
 涸沢小屋で大休憩。
 小屋で買ったもの、
水は無料。スイカは一人前400円。おはぎ200円。焼餅2個400円。
 涸沢小屋・涸沢ヒュッテイともに、メニューは豊富だ。
 名物のおでんは街で食べているものと変わりなし。
 カレーやラーメンなど小屋で調達できるのでお金さえあれば荷物は軽くできる。
 「奥穂高」へは、涸沢小屋奥のトイレ付近に指示標識あり。

 この先は、小岩と雪渓のある岩道に変わる。
 前は、中年女性が単独で登っている。
 この女性とは、後に(奥穂道で)お話をする。名古屋市から見えたと聞いた。
 
雪渓のある地点に来る。
 周りは、万年雪に覆われているが、横断地点は雪が消え僅か数メートルしかなかった。
 間もなく、展望コースと合流する。ここは、400メートルほど雪渓を(下り道)歩くことになる。
 
 岩にサイデングラードと書かれた→の表示がある。
 この先は、ヤセた岩尾根。鎖とハシゴが待っている。
 杖をリュックに入れ、岩用の皮手袋をはめる。
 先の見えない大岩は恐怖である。
 三点支持で進み前方が見えるまでの緊張と安堵のスリルは言葉に表せない。

 強烈な日差しをまともに受け水分補給するも、体力奪われ足取りは重い。
 立ち休憩をしながら何度も息を整える。時折冷たい風に救われる
 足元を見ると高山の花が咲きとても可愛いい。花数も多く慰められる。
 穂高岳山荘は小さく見えているのだが、なかなか近付けない。
 上から降りてきた人も沢山いて、すれ違う時の挨拶に元気をもらう。

 12時30分、穂高岳山荘に到着。
 宿泊の予約を済ませて、テラスで休憩する。
 山荘到着までは、快晴であったが、お昼からはガスが出た。
 ガスの晴れ間を見て奥穂に登ろうと機会を伺う。
 14時半、登頂開始。
 岩壁に付けられた鎖と長い鉄ハシゴ、広場から見ると高度差を感じる。三点指示で慎重に登る。ハシゴを上がるとゴツゴツ尖った岩が現れる。
 ここは坦々とした岩場で楽しみながら歩けた。奥穂は近い。
 山頂にくると、数人がいる。皆な感激と喜びで「奥穂バンザイ」をしている。
 岳人ならば、誰もが憧れる奥穂高.。
 標高3190メートル(全国第三位)に立つ。ここまで苦労して登ってきた皆の顔は歓喜に満ちていた。 
 次に祠に上がり記念撮影のセレモニーだ。
 ここでは誰もが家族のような一員となって撮ったり撮れたり。直ぐにガスが出て祠は見えなくなる。
 ジャンダルルムもすぐ近くだが、少し時間が足りないので小屋へ引き返すことにした。

 16時、穂高岳山荘に戻り談話室でコーヒを飲みながら、東京から単独で来た中年男性と会話する。
 彼は、槍ケ岳から来て今日はここに泊。明日は、西穂高まで行くといっていた。
 そこで、自分の予定と一部同じ(涸沢岳ー北穂高ー涸沢)なので様子を聞いてみた。

 彼の返事は、
 涸沢岳は、崩壊が激しくザラ場で滑りやすい。むしろ雪が付いている方が歩き良い。
 鎖やハシゴも多くて厳しい。一週間前にも滑落して死亡している。
 大キレットから涸沢岳までは穂高縦走路の中でも最も危険なところと云われている。
 団体ならレスキュもできるが、一人では何もできない。
 一度複数で歩き、経験を積んでから単独で来るのが良いと思う。それにヘルメットも忘れずにーー。

 彼のアドバイスを受け「「涸沢岳ー北穂高」は断念することにした。
 翌朝は、再度奥穂高に登り穂高岳山荘からサイデングラードを降りることにした。
 穂高岳山荘の壁には、
 2日前、サイデングラードで60才台の男性と孫が落石で死亡したとの記事が壁に貼られていた。
 予定通り歩く勇気は湧いてこなかった。

横尾山荘

横尾大橋、朝5時出発
上左、横尾大橋。
上右、横尾標識。

左、横尾山荘前の山に朝日が当たる。
 
前が北尾根と屏風の頭。後は、茶臼の頭、明神山の方向。

【「岩小屋跡」標識を過ぎると間もなく山道になる】

【屏風の頭(2565m)と屏風岩が朝日にあたる】

【本谷橋】
10日(下山)の画像です。
 上流の山は北穂高か?
 今日は、あの山域まで登る。遠いなぁーー

【涸沢近くに来る】

涸沢小屋へ
10日(下山)の画像です。

涸沢ヒュッテイから見た涸沢小屋です。ここは、奥穂と北穂の分岐でもある。
 
涸沢小屋から右は、北穂高へ。
 左は、奥穂高へ。

登山口
 涸沢小屋の奥から大雪渓の淵を登っていく
 登山道に残る雪は少なかった。

大雪渓
上、往路の雪渓横断は、数メートルしかない。

左、上部から見た大雪渓。

下、復路は、大雪渓を横断する。
 晴れていたのでアンゼンなしでも歩けた。軽アイゼンは必携。

サイデンクラード
 中央から左の岩尾根はサイデングラード。
 ヤセた岩場で緊張する。

 尖った山は、涸沢槍。

サイデンクラード

 安全なところばかりで撮影しているので怖い感じはしないが
 実際は、左上部の写真にあるようなヤセた岩尾根を歩く。
 滑りやすいので、雨・風・雷が怖い。
 むしろ雪の方が安全なような気もする。
 2日前にも祖父と孫が滑落死したと小屋の掲示板に書かれていた。

サイデンクラードは高山植物の宝庫

 
 
 

【サイデンクラード上部から穂高を撮る。右上は、前穂岳この先は下に続く】

【吊尾根を挟んで、左、前穂高(三峰の山)。右、奥穂高】

穂高岳山荘
上左、白出乗越に建つ穂高岳山荘。

上右、穂高山荘。鉄ハシゴの上から撮る。

左、(翌日)早朝の穂高山荘。

 背景は、奥穂高への岩場で鎖場・ハシゴをあがっていく岳人が見える。

【翌日早朝ー穂高山荘から涸沢岳を撮る】

【奥穂高へ】

 ガスが消えたのを見て14時30分奥穂高へ登山開始。
 中央部まで鎖やハシゴで直に上がる。これを過ぎると岩がゴツゴツした巻道となる。
 小屋前広場から見ると高度差があり凄い迫力に圧倒される。
 怖いなぁ。  大丈夫かなぁ。不安な気持ちになる。

【奥穂高へ】
上左、中央の山が奥穂高。手前のピークに案内標識が小さく見える。
上右、案内標識。

中左、後ろが奥穂高。
中右、山頂にある奥宮神社。
左、山頂部全景。
左コブ、奥宮神社。右コブ、山名を示す円盤形の銅板が埋め込まれている。

【奥穂高ジャンダルム】
 手前に標識標識あり。左、吊尾根を歩いて前穂高へ。
右、ジャンダルムを経て西穂高へ。

 正面、ジャンダルム。(奥の山)に人影が見える。ガスがかかると直ぐに見えなくなる。

穂高岳山荘テラスから見た日の出。山影は常念岳かと思われる

下り道。サイデングラード。穂高岳山荘の建つ白出コルまで続く

ここは分岐。正面が奥穂高・右上がサイデングラードの登り口

展望コースを行く】
 雪渓を400メートルほど横断する。
 アイゼンがなくとも歩けるが、雪質は固くて滑りやすい。一歩一歩踏みしめるように歩く。
 滑ったら何処まで落ちて行くのやら命の補償はなし。  軽アイゼンは、涸沢ヒュッティで売っていた。
 
下、背景は北穂高。

展望コース。チングルマなどお花畑の斜面が上の方まで延々と続いていた

涸沢ヒュッティからの景観

上高地への道。道端に咲いていた花

上高地へ

 ビデオ編